UFOが釧路に降りる

 
村上春樹さんの小説を読むようになってから、登場人物にリアリティがなくて、ストーリーの構成上や登場人物の特徴や良さや悪さを引き立てるために無理やり配置したような不自然さが抜け切れてない小説は気持ち悪くて読めなくなってしまった。
 
 
当たり前のことを、当たり前にしていて、純粋に悪人でもなければ善人でもなく、いろんな共通感覚を持った人間として描かれているのが、素晴らしいと思う。
 
 
例えば、神々の子供はみな踊る
という短編集にはいっている「UFOが釧路に降りる」という作品。
 
 
P.26
 

『上半身が固定されて、腰から下だけが機械みたいに滑らかに大きく動いていた。彼女のそんな歩き方を見ていると、過去の何らかの光景がでたらめに唐突に挿入されたような妙な感覚があった。』

 
 
特に物語に大きく関わるわけでもないけれど、誰もが経験する錯覚のようなものを主人公の視点で、描いているところ。こういう短いエピソードの積み重ねが主人公に対して、親近感を抱かせたり、その人が本当に存在するかのような物語への没入を生み出しているような気がする。
 
 
神の子供はみな踊るは、新興宗教や天災など、重いテーマを扱っているし、『かえるくん、東京を救う』はかなり非現実的な、小説だったりするんだけど、物語にでてくる登場人物を丁寧に描いているので世界に入り込めるのかなと思う。
 
 
 
 
 

 

 

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

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