シグナル・アンド・ノイズ

どんなにデータが溢れても、分析手法が優れても、結局のところ結果を解釈して、利用するのは私達。
すべてをコンピュータに任せることにはならないというメッセージや、そのデータが反乱する世界を賢く生き抜くための視点を持とうというメッセージが感じ取れる本だった。
 
 
 
 
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あまりにも多くの情報を手にすると、私たちは本能的に気に入ったものを選び、それ以外は無視する道を選ぶ。

 

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私たちはパターンを見つけて、機会や危険に瞬時に反応するようにできている。
 
問題はこの進化の過程で得た本能により、実際にはないパターンを見てしまうことだ、とポッジオ(マサチューセッツ工科大学・神経科学者)は言う。
 
 
私たちはデータを感情で選んでしまう癖を持っている。それは心理学でも何度も証明されていることだし、常に気をつけなくてはならない。
 
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私たちは今、増え続ける情報に理解が追いつかないという事態に陥っている。
 
 
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〜たとえ情報が増えていっても、有益な情報は同じようには増えない。そのほとんどはノイズであり、ノイズはシグナルより急速に増える。証明しなければならない仮説と使用するデータは増える一方だが、客観的な真実はほぼ一定なのだ。
 
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情報化時代を生きる私たちは、知識が増えているにもかかわらず、「知っていること」と「知っていると思っていること」の間の溝がどんどん広がっていくという危険に直面している。

その結果もっともらしくみえる予測が全く当たらないというこたが起こる。〜ターゲットとは違う場所なのに、いつも同じ場所に当てることができるから、自分は射撃がうまいと言っているようなものだ。
 
金融危機も、他の多くの予測の失敗と同じように、こうした錯覚から生じた。予測の「バラツキが小さい」ことを「的中率が高い」ものと謝り、掛け金を増やしてしまったのだ。

 

本当に有益な情報を見ぬくスキルというのは今後、まだまだ求められるスキルの一つだと思うし、世の中に出回っているビッグデータの恩恵というのは本当にうまく行った結果の上澄みをとってきているだけで、実際には葬り去られたデータの方が圧倒的に多いのだと思う。
解析スキルを身につけるのも大事だけど、データ分析をどのようにやるべきか、そこに偏見や思い込みは入っていないのかと冷静になる能力は大事なのかなと思う。
 
 

 

シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」

シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」

 

 

 
 

UFOが釧路に降りる

 
村上春樹さんの小説を読むようになってから、登場人物にリアリティがなくて、ストーリーの構成上や登場人物の特徴や良さや悪さを引き立てるために無理やり配置したような不自然さが抜け切れてない小説は気持ち悪くて読めなくなってしまった。
 
 
当たり前のことを、当たり前にしていて、純粋に悪人でもなければ善人でもなく、いろんな共通感覚を持った人間として描かれているのが、素晴らしいと思う。
 
 
例えば、神々の子供はみな踊る
という短編集にはいっている「UFOが釧路に降りる」という作品。
 
 
P.26
 

『上半身が固定されて、腰から下だけが機械みたいに滑らかに大きく動いていた。彼女のそんな歩き方を見ていると、過去の何らかの光景がでたらめに唐突に挿入されたような妙な感覚があった。』

 
 
特に物語に大きく関わるわけでもないけれど、誰もが経験する錯覚のようなものを主人公の視点で、描いているところ。こういう短いエピソードの積み重ねが主人公に対して、親近感を抱かせたり、その人が本当に存在するかのような物語への没入を生み出しているような気がする。
 
 
神の子供はみな踊るは、新興宗教や天災など、重いテーマを扱っているし、『かえるくん、東京を救う』はかなり非現実的な、小説だったりするんだけど、物語にでてくる登場人物を丁寧に描いているので世界に入り込めるのかなと思う。
 
 
 
 
 

 

 

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

 

 

 

 

自閉症とサイキックは究極の男脳と女脳なのか? 〜サイモンバロンコーエンの著作を読んで〜

EQ 感情的知能

SQ システム思考的知能
 
というものがある。
 
これらの知能はどちらも高い人というのはなかなかおらず、一般的にはトレードオフの関係にあるらしい。
 
たとえば、SQが高い人は数学の問題を解くのが得意だけど、現代文の物語文を読んでも登場人物の心情を察するのが苦手だったりする。
 
その逆も多い。
 
サイモンバロンコーエン先生によると、これらの知能のどちらに比重を置いているかの傾向には男女差が存在するらしい。
 
一般的に、男性がSQが高く、女性がEQが高い。(ただし文化・国による違いあり)つまり、最初の数学が得意というか好きなタイプは男に多い。
 
ただ、これは分布の形の問題であって、最も優れた女性数学者が最も優れた男性数学者に劣るというような主張ではないので、この主張を根拠に、ある個人を指して、「あなたは女性だから、数学者として一流にはなれない」などというのは間違っている。ただ全体的にどうもそういう割合になっているらしい。
 
おそらくは、男性ホルモンにどのくらいさらされたかが鍵になっているらしいけれど、沢山さらされればいいというような単純なメカニズムだとも言えないらしく、いまだによくわかってないらしい。(男性ではテストステロンという男性ホルモンが中程度の群が1番SQが高くなるらしい)
 
この知能が極端に偏った人間というのは探せばいるわけで、それはサイモンバロンコーエン先生によると、究極の男脳は自閉症で、究極の女脳はサイキックか占い師なのではないかと記されている。
 
確かに、自閉症というのは私たちがコミュニケーションと呼んでいるものが苦手だったり、相手の心を読むのが苦手だと言われている。しかし、ある種のシステムの理解には並外れた能力を発揮したりすることが報告されている。たとえば、暦の法則を理解して、何年も先の曜日を言えたりといったもの。
 
一方で、サイキック・占い師といった職についている人たちは、本人を見ただけで、考えていることがわかってしまったりする。普通の人から明らかに逸脱しているから、奇妙な感じがする。
けれど、私たちも表情からその人の考えてることがなんとなくわかったりする。結局誰もが持ってる能力が極端になっているだけなのだろうという考え方らしい。
 
 

 

共感する女脳、システム化する男脳

共感する女脳、システム化する男脳